こんにちは。
職人のたまご、奥村です。
先日、以下の記事を書きました。
「職人になって5年がたち、自分の手がたくましくなった」というお話でした。
じつは「手」以外にも、彫刻刀職人ならではの「職業病」があります。
そこで今回は、僕自身が日常生活で少し困っている職業病を5つご紹介します。
もくじ
彫刻刀職人の職業病
職業病1.手がマメだらけ
手がたくましくなったのは、喜ばしいことです。
けれど、手のひらのマメが日常生活で少々問題になります。
どんな場面で問題になるのか。
それは、「顔を洗うとき」です。
両手で水を汲み、顔にバシャバシャとかけるとき、僕は手のひらで軽くこすって洗っています。
そのときに、硬いマメが肌に当たり、顔に小さな擦り傷を作ってしまうことがありました。
予想以上に手の皮が硬いので、なるべくこすらず、やさしく洗顔しないといけないのは、少々ストレスですね。
職業病2.振動が気になる
彫刻刀に切れ味を付ける際、高速回転するバフに刃先を当てます。
バフは使えば使うほど形がゆがんだり硬くなるという特徴があります。
バフがゆがんだ状態で高速回転すると、不規則な遠心力が発生し、おおもとの機械がガタガタと振動してしまいます。
振動がしたら、バフを整えて滑らかな高速回転に直さなければなりませんが、職人になりたての頃はうまく整えられず、振動がずっと起こっていました。
「振動=上手にできていない」ということなので、振動したまま作業するのはかなり不快な気分になります。
あまりにできなさすぎて、振動がちょっとしたトラウマにさえなってしまったほどです。
例えば、車のアイドリングが不快に感じるようになりました。
ちょっとした揺れに敏感になり、ため息をつく始末です。
最近は、ようやくバフの整え方のコツがわかってきました。
振動もすぐに対処することができてきたので、このままトラウマを克服出来たらいいなと思います。
職業病3.切れ味にうるさい
日常生活でハサミを使うとき、どうしても切れ味が気になってしまいます。
よく切れない古いハサミを使うと、「何とかして切れ味を復活させなければ!」という謎の使命感に駆られたりもします。
とにかく気持ちよく切れないとむずがゆくなり、なんとかしたくなるのです。
日々、彫刻刀の切れ味を追求し続けていることで、「気持ちよく使えるかどうか」が自分の中に芽生えました。
それが日常生活にも反映されて、気持ちよさを基準に生活するようになったのかもしれませんね。
職業病4.物の作り方が気になる
ものづくりに携わるようになって、物がどのように作られているのかをよく考えるようになりました。
特に、物の原点には興味がわきます。
例えば、普段使っているボールペン。
インクはどこで仕入れているのだろうか。
プラスチックをどのようにしてペンの形にしているのだろうか。
ペンの先端にはどのような技術が込められているのだろうか。
などなど。
世の中にあふれる物には、作り手が存在し、技術が込められています。
日々いろんなものに触れる中で、職人視点で物を見るようになりました。
そして、大切に扱うようになりました。
職業病5.少子化が気になる
義春刃物は小学生向けの彫刻刀を製造しています。
そのため、少子化になるということは、彫刻刀の生産も減ってしまうことにつながります。
間違いなく今の作業状況は、10年後、20年後には変わってくるでしょう。
実際、僕が入社してからの5年間でさえ、職人の若返り、新製品の開発、新しい機材の導入など、様々な変化がありました。
大事なのは、ネガティブではなく、ポジティブな変化にすることだと思います。
そのためには、職人一人ひとりが危機意識を持ち、未来を見据えた行動を起こしていくことがポイントだと考えます。
以上、5つの職業病をご紹介しました。
これだけ日常生活に影響を及ぼしているということは、「しっかり職人してる」と言えるのではなかろうか。
これからも1本の彫刻刀に最高の切れ味を宿していこうと思います!
最後までお読みいただきありがとうございました。