こんにちは。
義春刃物の彫刻刀職人、奥村です。
彫刻刀の授業で、なかなか上手に彫ることができない子どもに対して、私だったらどんなアドバイスができるかを考えてみました。
小学校の先生の参考になれば幸いです。
- 彫刻刀に苦手意識をもつ小学生の子どもは、どんなところにつまずいているのかがわかる。
- 苦手意識を克服するための対処法がわかる。
もくじ
彫刻刀が苦手な小学生の女の子に対する指導にお悩みの先生へ
なぜその子は彫刻刀が苦手なのか、聞いてみよう
(写真:うまく彫れない理由があるはず)
彫刻刀に苦手意識をもつ子どもは、作業中のどこかにつまずいている可能性があります。
その子に「どんなところが苦手か」を聞いてみるとよいかもしれません。
子どもをよく観察し、どこでつまずいているのかを明らかにする際は、前もって仮説を立てておきましょう。
以下、子どもが苦手意識をもつ要因とその対策を記してみます。
子どもが彫刻刀に苦手意識をもつ要因と対策方法
要因① 彫り方がそもそもよくわからないから苦手
子どもは、「わからないことを苦手」と認識してしまう可能性があります。
練習したらうまくなるのに、その前段階で苦手と判断してしまい、学習意欲が下がってしまうのは避けたいところです。
彫刻刀を初めて使う子どもにとって、使い方が曖昧なまま作業を進めてしまうと、満足のいく作品に仕上げることができなくなります。
対策① 基本的な彫刻刀の握り方を教えよう
(写真:鉛筆を握るように持つ)
彫刻刀は、鉛筆を握るように持ちます。
注意点としては、そもそもの鉛筆の握り自体がうまく出来ていない場合があるので、「つまむように持つ」ことを意識させましょう。
詳しい握り方の手順は下記の記事が参考になります。
対策② 刃の種類の使い分けを教えよう
(写真:左から平刀、印刀、三角刀、中丸刀、小丸刀)
彫刻刀の刃の形には、それぞれの使い方があります。
彫るのが難しいと感じてしまうのは、もしかしたら刃の種類の使い分けができていないからかもしれません。
まずは、基本的な刃の種類の使い道を教えてあげましょう。
下記の記事が参考になります。
対策③ 基本的な彫り方を教えよう
(写真:両手を彫刻刀に添えると、彫りやすくなる)
子どもは木版を深く彫りすぎたり、勢い余ってはみ出してしまうことがよくあります。
そんなときは、刃の角度を寝かせて彫らせたり、切出し刀で輪郭に切れ込みを入れるなどの対策ができます(彫刻刀の使い方 完全ガイド)。
また、彫るときに両手を彫刻刀に添えると、安定して彫りやすくなります。
対策④ 自分の名前の文字を彫らせてみよう
彫刻刀の使い方を指導する導入段階で、自分の名前の文字を彫って、彫り方を学ばせることもできます。
単純に一直線に彫らせる練習よりも、より実践に近い形で彫り方を学べるのでおすすめです。
対策⑤ ゆっくり彫らせてみよう
細かいところを彫るのが難しいと感じる子には、ゆっくり彫らせることをおすすめします。
やみくもに彫ると勢い余ってはみ出してしまう可能性が高まるので、丁寧に彫ることを心掛けさせましょう。
要因② 怪我をしそうで怖いから苦手
「指を切ってしまったらどうしよう…」
彫刻刀は刃物なので、恐怖心を持っている子どもがいるかもしれません。
恐怖心を少しでも和らげるためには、「彫刻刀は正しく使えば安全である」と指導することが必要です。
さらに、未然に怪我を防ぐために、あらかじめ子どもが怪我をするパターンを知っておくことをおすすめします。
小学生は彫刻刀の授業でこんな時に怪我をしやすい!10個の具体例
対策① 安全指導を逐一行おう
(写真:彫る方向に手を置かない)
まずは子どもに、「彫刻刀は刃物なので気をつける」ということを認識させましょう。
一度だけ促すのではなく、毎回の授業のときや作業中にも「持ち方や使い方は正しくできているか」を確認させましょう。
子どもは夢中になると、安全面に関しておろそかになる場合があります。
怪我なく作品作りが出来るように、気を配りましょう。
小学校の先生が知っておきたい!子どもが彫刻刀を使う上での注意点
対策② 手になじむ彫刻刀を使わせよう
(写真:学童用彫刻刀ロングセラーのマルイチ彫刻刀)
彫刻刀の扱いがぎこちない子は、もしかしたら自分の手のサイズに彫刻刀が合っていない可能性があります。
手の小さな子どもには、マルイチ彫刻刀のように柄が短くて軽い彫刻刀を使わせるとよいかもしれません。
また、ゴム製の柄は持ちやすく滑りにくいので、安定して彫ることができます。
詳しくは下記の記事が参考になります。
対策③ 安全ガード付きの彫刻刀を使わせてみよう
刃が怖くて彫るのに躊躇してしまう子には、安全ガード付きの彫刻刀がおすすめ。
安全ガードは取り外し可能で、必要無くなったらいつでも外すことができるので、子どもの安全対策にはもってこいです。
対策④ 左利きの子は左利き用の彫刻刀を使わせよう
(写真:切出し刀の向きが違う)
彫刻刀には右利き用と左利き用があります。
両者の違いは、切出し刀(印刀)の刃の向きです。
左利きの子が右利き用の印刀を使うと、かなりぎこちなさを感じます。
怪我のリスクも高まってしまうので、利き手にあった彫刻刀を使わせましょう。
左利きの小学生は左利き用の彫刻刀を買った方がよい?老舗メーカーの回答
対策⑤ 滑り止めシートを木版の裏に敷こう
(写真:小さな滑り止めシートでも十分安定する)
彫っているときに木版がずれるのを防ぐために、ノンスリップシートを下に敷くことをおすすめします。
土台が安定することで彫りやすくなるので、自分のイメージ通りに彫り進めることができます。
ふいに木版がずれることもないので、怪我のリスクも下がります。
小学生の彫刻刀の授業で滑り止め(ノンスリップシート)は必要?
要因③ 他の子と比べて自分が劣ると思ったから苦手
(写真:彫れば彫るほど上手になる)
他の子の作品と自分のものを比べてしまうこともあるかもしれません。
しかし、その子の作品はその子の個性が詰まっています。
対策① 上手にできた点を細かく褒めよう
作品作りにおいて、うまくいった点とうまくいかなかった点、それぞれあると思います。
まずは上手くいった点を褒めちぎってあげましょう。
その子本人ですら気づかないくらいの細かなところまで作品を観察し、良い点を褒めて共有できるといいですね。
対策② 今後の課題を明示しよう
作品を「作って終わり」にするだけではもったいないです。
彫刻刀の授業を通して学んだことを未来へ生かせるように、価値づけて、方向づけてあげましょう。
対策③ 簡単なデザインの作品を検討してみよう
(写真:彫り跡がとてもきれいなシャインカービング)
昨今の新型コロナの影響で、図工の授業のコマ数がなかなかとれないかもしれません。
そんなときは、時間がかからず、かつ彫刻刀をガッツリ使って作品作りができる「シャインカービング」を検討してみてはいかがでしょうか。
シャインカービングは、たった2本の彫刻刀であらかじめ用意された下絵を彫るだけの新感覚彫刻アートです。
彫刻刀が苦手な子でも気軽に楽しめるので、おすすめです。(※対象年齢は11歳以上になります)
夏休みの工作は高学年の女の子が熱中したシャインカービングで決まり!
小学校の先生向けの彫刻刀記事を発信中
(上の写真のような小学校の先生のための彫刻刀講座を10記事以上ご用意しています)
大人になって彫刻刀を使うという機会は滅多にないと思います。
だからこそ、子どもにとって「彫刻刀の授業」が貴重で素敵な体験になるように、私たち職人一同、これからも魂を込めて彫刻刀を作っていく所存です。
この記事が彫刻刀に苦手意識をもつ子どもの一助となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
そんな子には、どのような指導をしたらよいのでしょうか?
なんとか上達させて、作品作りのやりがいや楽しさを感じてもらいたいです!