職人のたまごである私の配属部署は「仕上げ室」です。
「仕上げ室」は彫刻刀の刃に切れ味をつける工程を担当しています。
バフと呼ばれる硬い布に彫刻刀の刃先を当てて磨いていきます。
そうすることにより刃先にくっついていたバリと呼ばれる削りかすを取り除くことができます。
(写真:彫刻刀の刃を回転しているバフに当てている様子)
この仕上げ作業。
実はとても難しいのです。
バフに刃先を当てる角度、時間など。
細心の注意を払って仕上げないと抜群の切れ味になりません。
職人は1本1本手作業で行う中で、常に最適な角度や時間を意識して仕上げています。
熟練職人の作業スピードはなぜ早いのか?
職人のたまごである私。
まだまだ未熟な技術ですが少しずつ仕上げ作業に慣れてきました。
仕上げる数も徐々に多くなってきています。
ですがそれでも先輩職人の仕上げる数には全然及びません。
一日トータル1000本以上差をつけられることもあります。
この先私は、先輩職人に少しでも追いつけるようにこれからたくさん数をこなしたいと考えています。
どうしたら作業スピードを早めて数をこなすことができるのか。
いろいろと試行錯誤する中、新米である私と先輩職人のスピードを比べてみました。
そうすると、思いもよらない事実が発覚したのです。
先輩職人と私。
バフに彫刻刀の刃を当てる時間はほぼ変わらなかったのです。
つまり、彫刻刀の刃を仕上げている早さは一緒ということです。
バフに当てる時間は変わらないのになぜ先輩職人のほうが数をこなせるのか。
疑問が残りますよね。
そこで私は先輩職人の作業をじっくりと見てみることにしました。
先輩職人の背後からこっそりのぞき込むと…。
確かに早いのです。
バフに彫刻刀の刃を当てる時間は同じなのに、なぜか早い。
ずっと見るうちにあることがわかりました。
「1本の彫刻刀を仕上げてから次の彫刻刀を仕上げるまでの時間が短い」
ということです。
つまり、1本仕上げたらすぐ次の彫刻刀を仕上げる準備をしているのです。
なるほど!
新米職人と先輩職人の作業スピードの違いはここにありました。
「彫刻刀を仕上げたらすぐ次の彫刻刀を仕上げること」
実際、私は1本仕上げたら次に移るまでもたついています。
大体2秒、3秒かかってしまいます。
それに比べて先輩職人は次に移るまで1秒以内です。
1日何千本も仕上げ作業をするのでたった1,2秒の差でも大きな違いになります。
これに気付いた私はバフに彫刻刀の刃を当てる時間を早めるのではなく、1本仕上げたらすぐ次の仕上げに移ることを意識して作業をしました。
そうすると、仕上げる数が500本以上も大幅に上がりました!
まだまだ先輩職人には及びませんが、追いつき追い越せ精神でこれからも頑張っていきます。