僕が今、仕上げている彫刻刀はこちらの「平刀」。
(写真:平刀)
平刀は僕が仕上げ室に配属されて初めて仕上げた彫刻刀です。
いろいろな刃の形の中で仕上げるのが一番簡単と言われています。
実際、新米職人が初めて仕上げる彫刻刀が平刀なのです。
登竜門にはもってこいの平刀ですが。
「じつは仕上げるのがとてつもなく難しい彫刻刀なのではないか」
と僕はひそかに思っています。
何が難しいかというと。
「平刀をバフにまっすぐ当てるのが難しい」ということです。
(写真:彫刻刀を高速回転するバフ(硬い布)にまっすぐ当てるのは難しい)
平刀をまっすぐにバフに当てるだけの単純な動作。
なのに僕はまだ完璧にできません。
下の写真は先輩職人が仕上げた平刀です。
(写真:まっすぐに当てられた彫刻刀)
平刀をバフに当てると白い跡がつくのですが、先輩職人が仕上げた平刀は刃先全体がしっかりきれいに磨かれていることがわかります。
一方、職人のたまごである僕が仕上げた平刀は…。
(写真:斜めに当たった平刀)
うーわ…ヘタクソですね。
誰が見てもヘタクソとわかります。
大反省です(笑)
刃先の右側に注目してください。
しっかりバフに当てることができなかったため、右側だけ磨かれていません。
このように、僕が仕上げた平刀は刃先全体が磨かれていないことがよくあります。
刃先が磨かれていないと、切れ味を出すどころか、切ることすらできません。
熟練とたまご、比べてみると一目瞭然↓。
(写真:熟練職人が仕上げた平刀(左)と職人のたまごが仕上げた平刀(右))
僕が平刀を仕上げる時。
まっすぐに当てているつもりなのに、当たっていないのです。
どうしてまっすぐに当たらないのだろうか。
仕上げ作業をしながら悩んでいると、2つの理由が浮かび上がってきました。
原因① 僕の仕上げる動作にクセがある
平刀をバフに当てたときに、手首が少し外に開いていることがわかりました。
言葉だけではイメージしづらいかと思いますが、要するに、バフを当てる時に平刀をまっすぐにできていなかったのです。
フォームがもともとナナメに当たるような姿勢だった、ということですね。
これではまっすぐに当てようと思っても、そもそもナナメに当たるようなフォームなのでうまくいくはずがありません。
(写真:彫刻刀を挟んだヤットコを動かす時にクセが出る)
そこで僕は意識的に、手首を内側に絞るような感じで当てるようにしました。
そうすると無事、まっすぐに当てることができました。
クセというのは無意識のレベルで行われているものなので、なかなか気が付くことが難しいと思います。
ですが彫刻刀がバフにまっすぐに当たるというのは単なる物理現象。
そう考えると、できないということは必ずどこかに問題があるということですね。
僕は自分に問題があると思い、フォームを見直してみた結果、クセを見つけることができました。
原因② バフがデコボコだったり、硬すぎたり…
(写真:バフは使えば使うほど、形や硬さが変わってくる)
もうひとつ問題を発見しました。
それは、バフです。
バフは使えば使うほどデコボコしてきたり、形が変わってしまいます。
なので常にバフの形や硬さを意識しながら仕上げなければなりません。
平刀は真っ平なのでバフも表面が平でなければなりません。
デコボコしていると、まっすぐ当てようにも当たりませんよね。
形が崩れてきたら、クギを使ってバフをほぐします。
ですが僕はまだうまくほぐすことができないようです。
今はデコボコした状態で平刀を当ててしまっているので、ナナメに当たってしまいます。
これをまっすぐにするにはバフの形を整えなければなりません。
うーん…これがむずかしい。
先輩職人のほぐし方をしっかり見て勉強しよう。
バフ(硬い布)に関する記事もこれを機に書いてみようかな。
まだまだ伸びしろがあると思って頑張りたいと思います!
長くなりましたが、今回はこの辺で。