ある日のこと。
いつものように仕上げ作業をしていると…。
(写真:仕上げ作業の様子)
仕上げている彫刻刀の刃に違和感がありました。
彫刻刀の刃をよく見てみると、なんだか刃の面がうまく磨かれていない気がしました。
(写真:印刀の刃の面)
気のせいかなと思って作業を続けていましたが、何本も同じようにうまく磨かれていませんでした。
もちろん、刃の面がしっかり磨かれていないと、製品として出荷することはできません。
ではなぜ、うまく磨かれていないのでしょうか?
「刃の面が荒いのかな?」と、僕は考えました。
つまり、彫刻刀に刃を付ける工程の時に面が荒く削られてしまったのだと思ったのです。
刃の面が荒いということは表面がデコボコということです。
デコボコでは、うまく磨くことができません。
ですが、もうひとつ原因が考えられました。
「僕の仕上げ方がヘタ」
つまり、僕が刃の面をバフ(硬い布)にしっかり当てることができていなかったということです。
自分ではわからなかったので、熟練職人に助言をいただきました。
そこで出た結論は…。
はい。
僕が原因でした。
僕がヘタクソだったんです。
僕が刃の面をしっかり当てることができていなかったのです。
なのに僕は…。
「刃付けの工程で刃の面が荒くなったんじゃ…」なんて思っていました。
そうです。自分のせいじゃないって思いきっていました。
最近、仕上げるスピードが速くなっていたので1本1本の磨きをおろそかにしていたかもしれません。
テンポよく仕上げられることが気持ちよくて調子に乗っていました(笑)
天狗になって伸びた鼻をへし折られた心地です。
でも!
そこから熟練職人の手ほどきで刃の面をしっかり磨けるようになりました。
鼻がへし折れてよかったです。
危うく、質の低い彫刻刀を作り続けるところでした。
僕はまだ職人のたまご。
「失敗の数だけ技術が磨かれる」と思って、今回の失敗を前向きに捉えたいです。
でもひとつだけ。
褒められることがあります。
「何かいつもと違うんじゃないか」という「違和感」を持てたことです。
今回は刃の面が荒いんじゃないか?ということに気付けました。
このように「何か変」「何かがおかしい」などに気付くことはとても重要なことだと思います。
いつも何気なく作業しているのではなく、常に問題意識をもって取り組んでいる証拠です。
これは褒められます。
…誰かに褒めてもらったわけではありませんが。
とりあえず、自分で自分を褒めてあげたいと思います。
今回はゆるんだ気が引き締まった出来事のお話でした。
ほじゃ、この辺で。